武道を始めたばかりの頃、組み手が怖かった。
自分の突きや蹴りを繰り出す暇なんてない。
相手の攻撃が当らないよう当らないよう逃げてばかりだった。
しばらくはそれで何とかなった。
しかしある日、相手の蹴りがもろに股間を直撃。
私は意識を失いかけた。
さらに数日後、相手の拳が私の顎に炸裂。
この時は完全に気を失った。
不思議なことに、これらの強烈な痛みを経験した後、組み手に対する恐怖感が薄れていった。
痛みのレベルを知ったからだ。
経験する前は、どのくらいの痛さなのかが分からない。分からないから怖くて仕方がない。
でも一度経験してしまうと、(決して平気ではないが)痛さの予想ができて耐えられる。
さらに、技術も向上し上手く捌くことも出来るようになる。
昨日、突然思い出した昔の記憶。
失敗を恐れてなかなか前に進めない近ごろの私に、20年以上前の私がエールを送ってくれているような気がした。