A「どちらの出身ですか?」
B「日本です。」
この会話、例えばアメリカ旅行中のBさんがアメリカ人のAさんに話しかけられた、というシチュエーションなら自然ですよね。
でも、AさんもBさんも日本人、しかもBさんはどこからみてもコテコテの日本人だった場合、不自然ではないでしょうか。Bさんはふざけているにちがいありません。
店員「いらっしゃいませ。何になさいますか?」
客「飲み物ください。」
このあと店員さんは「どちらの飲み物になさいますか?」と聞き返すに違いありません。
会話を円滑に進めるためには、抽象度/具体度を適切に調節して話す必要があります。
抽象度/具体度とは、例えば次のようなものです。
高 ————–(抽象度)————– 低
生物 >> 動物 >> 犬 >> うちのポチ
低 ————–(具体度)————– 高

抽象度が高く(具体度が低く)なればグループに含まれるモノが多くなります。
具体度が高く(抽象度が低く)なればグループに含まれるモノが少なくなります。
ヘリコプターに乗って高度を上げながら見る景色が抽象度高(具体度低)。
高度を下げながら見る景色が具体度高(抽象度低)。
会話の抽象度/具体度の調整は、話の内容に加え、お互いの重なり部分、共通項の多さによっても変わります。
冒頭の会話において、もし二人とも日本人であり日本で交わされた会話であるならば、
例えばBさんは具体度を上げて「札幌出身です。」と答えるのが自然ではないでしょうか。
私は日々生徒たちから様々な質問を受け、答えています。
しかし、中には抽象度/具体度を適切に調整されていない質問もあります。
生徒「先生〜、わかんない。」
私 「ん?何が?」
生徒「数学」
私「数学のどこかな?」
生徒「足し算」
私「そうか。それじゃ思い切ってひと桁の足し算からやり直すか。」
生徒「そんなのわかってるよ。」
私「ん?」
生徒「平方根の足し算だよ。」
自分のほしい情報を得るためには適切な抽象度/具体度で相手に尋ねなくてはなりません。
少し前、平日学校が休みで家にいた長男に声をかけました。
父「なぁ、昼、何食べたい?」
子「何でもいい」
父「…じゃあ、小麦粉食って水飲んで腹をストーブであぶるってのはどうだ?」
せめて麺類とかパンとか言ってくれー。
相手に正しく自分の言いたいことを伝えるためにも、相手から聞きたいことを聞くためにも、
抽象度/具体度の調整は大切です、というお話でした。