運動方程式

1. こむずかしい話

運動方程式 \( m \overrightarrow{a} = \overrightarrow{F} \) は決して「力とは、質量に加速度を掛けたものである」という”定義式” ではない。また、\( \overrightarrow{F} \) という力と \( m \overrightarrow{a} \) という力がつりあっているという “つりあいの式” でもない。言ってみれば因果律である。「風が吹けば桶屋が儲かる。」(知ってますか?)と同じ。

運動方程式を \( \overrightarrow{a} = \displaystyle\frac{\overrightarrow{F}}{m} \) と変形して、次のように読むと(原)と(結)がはっきりする。

「質量 \( m \) の物体に力 \( \overrightarrow{F} \) を加えると(因)、加速度 \( \overrightarrow{a} \) を生じる(結)」

そもそも運動方程式 \( m \overrightarrow{a} = \overrightarrow{F} \) は異質な物理量を等号で繋いだものである。左辺は今注目している物体の持つ性質であり、運動の状態なので物体を観測することで得られる量である。一方、右辺は物体の外から与えられるものであり、物体の性質、運動とは関係のない物理量である。

運動方程式 \( m \overrightarrow{a} = \overrightarrow{F} \) に問うて得られる答えは、力とは何か?ではなく、物体はどんな運動をするのか?である。その力が糸の張力なのか、ばねの弾性力なのか、万有引力なのか、接触により伝わる力なのか、離れていても働く力なのかなどの情報は得られない。力とは何か?を知ることは運動方程式(Newton力学)の守備範囲を超えている。

2. ニュートンさんについて少々

I.Newton (1642 – 1727)

イギリスの大物理学者、1664年ケンブリッジ大学卒。この年ペストの流行を避けて帰郷し、その間に光のスペクトル、万有引力、微積分法を発見する。27歳のとき、ケンブリッジ大学のルーカス教授となる。しかし、フックとの逆2乗比例則やライプニッツとの微積分法の優先権争いに嫌気がさして、その研究成果を発表しなかった。ハレー彗星にその名を残すエドモンド・ハレーの勧めにより、1687年にNewton力学の集大成とも言える「自然哲学の数学的原理」、通称プリンキピアの大著を完成した。ちなみにこの年、日本では “生類憐れみの令” が制定されている。

3. 運動の3法則

第1法則(慣性の法則)

「物体に力が働いていないか、働いていてもつりあている場合、静止している物体は静止を続け、運動している物体は等速直線運動を続ける。」

物体が持つ性質、慣性についての法則である。自然界は非常に保守的である。なんとか現状を維持しようとする。そのため、新しい変化に対しては抵抗してみせる。これが慣性という性質である。言ってみれば運動の変化のしづらさ、である。この「しづらさ」の度合いを表す物理量が質量である。
※ 実は質量には “重力質量” と “慣性質量” の2種類の定義があるが、ここで述べているのは “慣性質量” の方である。

第2法則(運動の法則)

「物体に生じる加速度の大きさは、物体に働いている力に比例し、物体の質量に反比例する。その方向は、物体に働いている力の方向に一致する。」

これを式で表したものが運動方程式である。Newtonの業績の中で最も偉大な発見である。(と思う。)

第3法則(作用反作用の法則)

「物体 \( A \) と物体 \( B \) が互いに力を及ぼしあているとき、 \( A \) が \( B \) に及ぼす力と \( B \) が \( A \) に及ぼす力は、同一作用線上にあり、大きさが等しく、向きが反対である。」

この法則で最も注意を要するのが、つりあっている2力との区別である。作用と反作用の関係にある2力は2つの物体間に働く力で、合成して 0 とすることはできない。一方、つりあっている2力は1つの物体に働く力で、合成すると 0 になる。

4. 運動方程式の立て方

決まった手順で立式すれば実に単純な作業である。我流はやめて、以下の通りに進めること。

  1. 自分が注目する物体を明確にする。
    このステップをおそろかにしてはいけない。「今自分はどの物体に注目しているのか。」を明確にする。
     
  2. 注目している物体に働く力を矢印で図示する。
    このステップができれば、8割以上解けたようなもの。できな人にかぎって図を描かない。手を抜かず、頭で処理せず、必ず作図すること。(電磁気力を含んでいない。)
    (1) 何はなくともまず重力を描く。
    (2) 接触により生じる力を描く。触れているところからは必ず力を受ける。
     ● 面と接触 → 抗力(垂直抗力、摩擦力)
     ● 糸と接触 → 張力
     ● ばねと接触 → 弾性力
     
  3. 加速度の向きを決める。
    決めた方向がすべての力の矢印の \( + \) 方向である。決め方は任意であるが、いま運動しいてる(しようとしている)方向に取るのがよい。
     
  4. 運動方程式 \( m \overrightarrow{a} = \overrightarrow{F} \) を立式
    注目物体の質量)\( \times \) (加速度)=(注目物体に働く力の和)
    3. と同じ方向なら \( + \) で、逆向きなら \( – \) で右辺に並べる。