前回の解答
「\( x \) の不等式 \( ax > b \) を解け。」
( i ) \( a > 0 \) のとき
両辺を \( a \) で割ると
\( x > \displaystyle\frac{b}{a} \)
( ii ) \( a < 0 \) のとき
両辺を \( a \) で割ると、\( a \) が負の数であることから、不等号の向きが逆転して
\( x < \displaystyle\frac{b}{a} \)
( iii ) \( a = 0 \) のとき
不等式は \( 0 \cdot x > b \) となる。
(ア) \( b < 0 \) のとき
上式を満たす \( x \) は任意の実数。
(イ) \( b \geq 0 \) のとき
上式を満たす \( x \) は存在しない。
Ans. \( \left\{
\begin{eqnarray}
a &>& 0 \, \verb|の場合| \quad x > \frac{b}{a} \\
a &<& 0 \, \verb|の場合| \quad x < \frac{b}{a} \\
a &=& 0 \, \verb|かつ| \, b < 0 \, \verb|の場合| \quad 任意の実数 \\
a &=& 0 \, \verb|かつ| \, b \geq 0 \, \verb|の場合| \quad 存在しない
\end{eqnarray}
\right. \)
チャート式の名言 \( \sqrt{(\verb|こわい| )^2} \)
文字定数の怖さを少し理解していただけただろうか。
さて、今回は次の計算問題から見てみよう。
$$ \sqrt{9} = \sqrt{3^2} = 3 ,$$
$$ \sqrt{25} = \sqrt{5^2} = 5 $$
特に問題はなさそうだ。
ではこれをまとめて
$$ \sqrt{a^2} = a \cdots (1) $$
となる….
いや、ちがう!!
私が学生時代に愛用していた青チャートには
$$ \sqrt{ ( \verb|こわい| )^2 } $$
と書いてあった。
これのどこが怖いのか?
私にはテスト後の生徒の言葉
「ばっちりできました!」
の方がずっと怖い…
それはさておき、もし(1)式を認めてしまうと次のようなことが起こる。
$$ \begin{eqnarray}
\sqrt{a^2} &=& a \\
\sqrt{(-3)^2} &=& -3
\end{eqnarray} $$
これは正しい? いや正しくない。
$$ \sqrt{(-3)^2} = \sqrt{9} = \sqrt{3^2} = 3 $$
これが正しい。
\( \sqrt{3^2} \) も \( \sqrt{(-3)^2} \) も結果は 3 になるということ。
では、(1)式をどのように修正すればよいのだろうか。
先ほど見たように(1)式のままでは \( a = -3 \) のとき
$$ \begin{eqnarray}
\sqrt{a^2} &=& a \\
\sqrt{(-3)^2} &=& -3
\end{eqnarray} $$
となってしまう。
そこで次のようにしてみる。
$$ \sqrt{a^2} = -a$$
$$ \sqrt{(-3)^2} = -(-3) = 3 $$
2乗とルートをマイナスをつけて外すのだ。
\( -a \) は負に見えるが、\( a \) の中の負と外の負で合わせて正になる。
この考えを用いて(1)式を訂正する。
\( a \) の中に正の数が入っていればそのまま外し、
負の数が入っていればマイナスをつけて外す。
また 0 が入っていてもそのまま外せるので、
まとめると
$$ \sqrt{a^2} = \left\{
\begin{eqnarray}
& a & ( a \geq 0 ) \\
& -a & ( a < 0 )
\end{eqnarray}
\right. $$
これが正しい。
さらに右辺を見て、
$$ | \, a \, | = \left\{
\begin{eqnarray}
& a & ( a \geq 0 ) \\
& -a & ( a < 0 )
\end{eqnarray}
\right. $$
を思い出すことができれば、
$$ \sqrt{a^2} = | \, a \, | $$
とシンプルに表現できる。
使用上の注意をよく読み正しくお使いください。
定理、法則、公式などを思い込みと雰囲気で使ってはならない。
使う場面、使い方を正しく覚えて使わなければならない。
道具は正しく使ってこそ役立つのだ。