「おばんでした~」
私が子どものころはよく耳にしたあいさつだ。
近頃、トンと聞かなくなった。
先日、久しぶりに近所のスーパーで年配の女性が口にしているのを聞いた。
これはもちろん北海道弁で「こんばんは」という意味だ。
でも、なぜ過去形なのだろう?
そういえば英語で丁寧さをかもし出すときによく過去形が使われる。
「窓を開けていただけませんか?」 → Would you open the window?
英語の過去形は「過去」というよりも「距離をあける」というイメージだ。
話し相手を上に持上げて人間関係の“距離”をとれば敬語。
現在との時間的な“距離”と考えれば過去。
事実との“距離”と考えれば仮定法。
そうか。ということは、「おばんでしたー」は敬語表現なのだ。
そういえば、高校時代の体育の先生はやたらと過去形を使っていた。
「はい、座った。」「はい、立った。」「はい、伸ばした。」
そのたびに、
「まだ座ってない。」「まだ立ってない。」「まだ伸ばしてない。」
と、ツッこんでいたような気がする。
言葉って面白い。