その昔。
まだ2人が若かったころの話。
あれは日曜日の朝だったか。
私はまだぐっすり眠っていた。
先に起きたカミさんは、私のためにモーニングコーヒーを入れてくれたのだ。
そこまではよかった...
彼女はそれを私の枕元に運ぼうと、布団をまたぎながらゆっくりゆっくり...
その時だ。
バシャッ!
つまづいた彼女は、あつあつのコーヒーを私の顔にぶちまけたのだ。
「アッツ、アッツ。」
熟睡していて、すぐに何が起こったかわからない私は、
わけもわからず飛び起きて顔を手で拭った。
そして目を開けると、マグカップ片手に口を大きく開けた彼女が、
そこで凍りついていた。
次の瞬間。
ワーッ!
そう叫びながら、なぜか彼女は玄関の方に走っていき、
そこで突っ伏し、大声で泣き始めた。
「どうした、どうした。」
私は半分パニックになりながらも、すぐに状況が呑み込めた。
(おーい。熱くて泣きたいのは俺の方だよう~)
そう思いながらも、なぜか私の方が彼女を慰めたのだった...。
人は彼女のことを「伝説の女」、あるいは「リアルサザエさん」と呼ぶ。