「人事を尽くして天命を待つ」という言葉を聞くと、
必ず思い出すエピソードがある。
小5の冬だったろうか。
日曜の朝、車で出かけようと父と駐車場に行ってみると、
前の晩から降り積もった大雪で車が埋まっていた。
雪をおろし、車に乗り、いざ出発しようとするが、
タイヤがスタックしてしまった。
雪質も最悪で、ヘルパーを使おうが何をしようが
タイヤは空しく空転するばかり。
30分ほどしたところで、小学生の私は嫌になり、
「もう今日は出かけるのやめようよ。」
と言うと、父は笑顔で、
「もう一回だけ試してみないか?」
…私はしぶしぶ手伝う。が、やはり動かない。
「もういいよー。」
「もう一回やってだめならあきらめよう。」
このやり取りを何度繰り返したか...
そしてとうとう車は動いたのだ。
その瞬間、子ども心に ”ああ、この人はすごいなぁ” と思ったものだ。
今となっては「なんでJAF呼ばんかったの?」と思うのだが、
きっとあれは親父の教育だったんだろう。
振り返ってみると、私の知る限り、親父は一貫して
「人事を尽くす」人なのだ。
一方の私だが、あのときの親父の教育は生かされていないような気がする。
申し訳ない限りだ…。